肉離れはスポーツではもっと一般的な怪我と言われていますが、「肉離れはちょっと休めば治る」、「病院に行ってもレントゲン撮って湿布もらって終わり」と捉えられている方が多い印象があります。
しかし、これがなかなか厄介で再発例も少なくありません。なぜ起こるのか、何が起こっているのか、その治療とは何かについて何回かに分けてお話させていただいていますが、今回は発生メカニズムについて力学的モデルを使って考えます。
私はこの図は非常に参考になると思います。大腿二頭筋単体で考えずに、筋のついている骨(骨盤と腓骨)が固定されていて安定性した筋機能が発揮されると考えると、その骨(起始部、停止部)にどのような力が働いているかが重要だからです。
下図は
起始(座骨)と停止(腓骨頭)に働く力を表しています。BFに過度な負担がかからないようにする力をAssist force、負担がかかる方向に働く力をAgaisnt forceとしました。
これを更に線形モデルにしたのが下の図です。そして
Assist force-Against force<0 つまり、補助する力より抵抗する力が強くなると大腿二頭筋をエキセントリック(遠心性)にけん引する力は強くなり、肉離れ発症のリスクが高まるということです。
尚この図はあくまで矢状面(横から)の図なので、加えて骨盤を横に傾けたり、回旋させたりする力(*Lateral tilt,Rotation force)や、さらには膝関節を回旋させる力、固定する力も関係してきます。
さらには、Anterior Pelvic tilt force :骨盤を前傾させる方向に働く力、を取り上げて考えても、例えば胸椎の伸展が出ず、腰椎伸展で代償しそれに伴い骨盤前傾が起こります。また、Knee joint force:膝関節に働く力も1膝を伸ばす力、2膝を前方に移動させる力があり、これらのいわば外力も考慮する必要があります。
骨盤が前傾しようとする、膝が伸びようとする力が、BFの持つ力を上回ったときに、筋組織が損傷するリスクが高くなるということです。
このリスクを回避するには身体の使い方を改善することが一つ大切であると思います。
次回は細胞や筋繊維単体でみた場合の力学的因子を考えてみたいと思います。