今回はどのようにして筋、腱を「育てていくか」の具体的な計画の立て方についてです。
前述のとおり、「修復に向かう組織の状態を適確に把握し、適切な負荷をかけて自然治癒を阻害しない」というのが基本のコンセプトです。私はこの状態の把握には理学所見(ストレッチ、力)はもちろんですが、MRIは非常に重要だと思います。
なぜならば、本人の感覚だけだと難しいのが一つ、更には治療家の感覚だけでも難しいと思います。感覚とはその一瞬のことでそこには記憶や、感情が入り混じります。「早く治りたい」、「早く治したい」という感情が、今一瞬の感覚で判断しているつもりでいても、バイアスとなって判断を鈍らせます。ですので客観的な判断、つまり画像診断が有効だと思います。特にタイプⅡ、Ⅲに相当するようなバチン、と痛みが出たようなケースではとても信頼があります。
もちろん、自分の身体一つで、自分の感覚に絶対の信頼があるという方ならばよいと思います。しかし私も含め一般人がこの判断を適確に行うのは結構大変です。
このMRIの診断での筋、腱の修復度合いを時間軸の基本に設定します。
下図の画像は急性発症の大腿二頭筋肉離れ、タイプⅡ-3です。サッカーの試合中にスプリントで受傷しました。おおよそ9Wでの復帰を目標にしています。
最初の時点では、その先のMRI画像がないのでどのような経過をたどるかはわかりませんが、
基本的には画像は以下のような修復の過程をたどることが多いと思います。
赤矢印の部分が腱ですが、ここがどう育っていくかにあわせて負荷を設定し、適切な負荷で腱の修復を促します。腱は1:不連続、2:連続性の獲得、3:肥厚、4:成熟(輝度変性左右差なし)のプロセスをたどります。
そしてこれが重要ですが、過負荷にならないようにフェーズごとの安静度(制限)を設けます。
基本的には連続性が得られるまではゆっくりのジョグ、肥厚するまでは60%程度のスピードまで
肥厚してきたら80%未満、腱が成熟してから80%以上の動きを行います。この安静度が重要です。
このMRIを軸とした時間軸でフェーズごとの制限を設定したなかで、機能面と動作面での
獲得目標を設定します。
とにかく「腱が成熟するまではダッシュはしない」ここがポイントです。
グレーの部分が実際の結果です。色々ありますが、とにかく焦らない、腱が育つのを待つことが大切です。
「傷を負った狼は巣穴からでない」と言います。したたかに:健たかに:下確かに。