CEMBI:Centro Educational Mestre Bimbaでのトレーニング
CEMBIはRio de Janeiroの空港から車で1時間ほどの山間の小さな村Papukaiaのほど近い山を切り開いて作った牧場の中にある、カポエイラ道場だ。イベントがあると世界中からカポエリスタが集結し、それは圧巻だという。
Camisaは僕が語るまでもなく、ブラジル(ということは世界)でもっとも著名なカポエリスタの一人でMestre Bimba(カポエラのマスターの元祖のような方)の直系のお弟子さんだ。BimbaがペレならZico(Camisaも白人の方)のような存在だ。僕が言うまでもなく、大きな組織の指導者にありがちな自分は何もしないというような態度とは程遠い、質素で素朴で謙虚な方の印象で、まさに探究者というたたずまいだった。無駄な肉はなく引き締まった身体で、時折みせるデモではその洗練された光を放つような動きの鋭さを垣間見た。
Mestre Camisaのもと6回ほどのTRに参加させていただき、直接みていただく機会を得た。「イベントだと話すらできない、本当にラッキーだよ」とColvoさんが言った。Mestreのトレーニングはとてもシンプルだ。基礎的な蹴りとディフェンスの組み合わせの繰り返しをひたすらやった。「どういう帯(カポエイラは帯の色で位がある)の人のトレーニングもこういうやり方だ。Sequence、組手などやることは山のようにあるが、『生徒がオーバーフローする。難しい動きは相手と実際組んだ時にディフェンスするなかで自然に出てくる。あとでそれは思い返して書き留めて生徒が勉強すればいい。』とMestreはいつも言うんだ」とColvoさんは言った。
『ディフェンスするなかで…..。」
ブラジルのサッカー、カポエイラはとかく流れるような、トリッキーなドリブルや動きが注目され、それは彼ら特有の身体能力、混血による優性な遺伝によるものなどと解釈されがちだし、僕もそう思っていた。独特のリズムは生まれ持ったもので僕らが決して真似できるものではない。確かに一理あるかもしれないが、それは違うかもしれない、と思った。
その動きを導きだすものは、無意識を意識化できるまで行う、こういったひたすら意識して行う基礎トレーニングにあるのではないだろうか。「Gingaはすべての基礎だ。蹴りで出した脚は必ず元の位置に戻す。必ずだ。ニュートラルのポジションに戻ればそこからなんでもできる。ニュートラルに戻ることを意識するんだ」。
実際僕がサッカーで知り合ったブラジル人指導者はこういう人だった。様々な基礎トレーニングをよいテンポの中でリズムよく行い、あとはゲーム。込み入ったフォーメーショントレーニングや、選手の意図を奪うような設定のあるトレーニングはしない。
基礎トレーニングを無意識にテンポよくできるまでやる。あとはディフェンス。アタックは自然(勝手に)出てくる。
相手の動きや意図をすべて見透かしているような、いぶし銀のボランチやザゲーロ(センターバック)みたいだと思った。
続く