肉離れについて⑤治療でなにをするか

前回は実際にどのくらいの期間でなおるか?ということについてお話しましたが、次は「実際何をするか」についてお話させていただきます。

その前に大切なのは「治療とは何か」についての認識です。私は治療とは以下のように考えます。

1 治るのは組織の自然治癒力であり、その邪魔をしない。

2 現状を見極め、理解し(患部がどのような状態か。何ができて、何ができないのか)最適な介入を

する。

3 受傷した背景(既往、身体の使い方の癖など)を推察する。

この3点を理解することが肝要です。自然治癒を軸として現状を適切に見極めてタイムリーに介入する。また、その特性(背景)について理解する。そう、農業と一緒です(笑)。つまり

「傷を負った筋、腱を育てる」のです。

下に時間経過と組織や機能の回復を模式したグラフを作りました。

 

水色矢印:現状の回復段階(0Point)とすると、それよりも弱い負荷だと(灰色)回復は遅延します。また、時間さえかければよいというものでもないので、「ダッシュはそれからやっていない」というような状況もこれに該当すると思います。また、それよりも強い負荷(赤)だと獲得能力<負荷となり再発します。「放置しておいて久しぶりにダッシュしたらまた痛くなった」、「スピードは出すなと言われたのにダッシュしたらまた痛くなった」というのもここに該当します。

つまり「傷の現状を時間経過と獲得能力の両側面から見極めて、適切に介入していくこと」が治療であるという認識が大切になります。

加えて、受傷した背景です。これは身体的側面と心理的側面があります。例えば、ハムストリングスの肉離れであれば、殿筋がつかえていなかった、足の体重の載せる位置が後方だった、背筋が弱い、などの身体的な側面があり、なぜそうなっているのかを推察し改善することが大切です。また、試合が近くて焦っていた、張りが続いていたのに無理をしたなど心理的側面もあります。これらの要因に患者(選手)と一緒に冷静に向き合っていくことが大切です。

 

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