今回は、肉離れとは何かについてです。
日本整形外科学会によると、「スポーツによるものが多く、典型的なふくらはぎの肉離れは、下腿三頭筋の内側頭の筋肉の部分断裂です。大腿部のものは、前面は大腿四頭筋、後面はハムストリングの筋部分断裂です。 筋肉が伸ばされながら収縮すると、筋力に負けて部分断裂を生じることがあります。それが「肉離れ」です。」、としています。簡単に言うと「縮む力より引っ張る力が強くて筋肉が切れた」状態です。
2-1 どこで起こるのか
図は筋肉の模式図です。左から骨-腱(tendon)-筋肉(muscle)です。①が筋肉と筋肉の間の膜(筋膜)です②が筋肉実質③が腱および、筋と腱の境目(移行部)、④が骨と腱の境目です。一口に肉離れと言ってもこれだけ色々な場所や組織で起こり、その損傷度合いによって治る期間は変わってきます。
2-2なぜ起こるのか
図は腿の裏側の筋肉(ハムストリングス)を使った簡単な模式図です。ちょっとややこしいですが、
Fib(大腿二頭筋)、Fsm(半膜様筋)、Fst(半腱様筋)、Gm(大殿筋)、Fc(大腿四頭筋)、Fj(膝関節に前・屈曲方向に働く力)
Fib+ Fext= Ftotal ・・1大腿二頭筋とそれを伸ばす方向に働く力の和=全のかかる力
Fext=(Fst+ Fsm+ Fgm)-(Fc+Fj)・・2 他のハムストや殿筋の力-膝を伸ばそうとしたり前に出す力
Fib<Fext
Ftotal <0
となったとき、つまり、ハムストリングスを引き延ばそうとする力が縮む方向の力より大きくなった場合に強いストレスが発生し、過度になると切れるということです。
2-3 切れたらどうやって治るのか。
筋肉をデザインする 石井他 2003
繋がっていた筋が切れると周囲の毛細血管も切れて出血します。出血するといわゆる炎症反応が起こり、治癒を促すプロセスが展開されます。
Charvet et al. Muscles, Ligaments and Tendons Journal 2012
上図は筋肉Mと腱Tの境目の模式図です。この二つは組織のたんぱく質の組成が違うため、くっつきにくく、治りにくいのです。これは骨と腱の境目然りで現時点では骨と腱は一度剥がれるとくっつかないというのが一般的な見解です。
今回はここまでです。