肉離れについて①はじめに

「肉離れ」。この言葉はスポーツをする方、またされない方でも一度は聞いたことがあると思います。MRIの普及に伴い急速に病態の理解が進みましたが、まだまだ一般的な認知度は低いように思います。何となくおとなしくしていたら治った、という方も多いと思います。また「バチン」となって2か月くらいしたらよくなったけど、ダッシュは怖くてそれ以来やっていない、というような方もおられると思います。更には、「以前やったところがいつも張ってくる。」、「かばっていたら他がいたくなった」というような方も散見します。そして「そんなもんだ」と思っている方も多いと思います。

しかし、適確な病態の理解と適切なトレーニングによって再発やパフォーマンスの低下はかなり防げます。

スポーツで最もポピュラーなのに実はあまり知られていない「肉離れ」について何回かに分けて、治療方法までのお話をしたいと思っています。

 

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肉離れについて①

「肉離れ」。スポーツをされる方、またされない方でもこの言葉はどこかで聞いたことがあると思います。MRIの普及とともに病態の理解が進みましたが、実はまだ一般的ではないと思います。「病院に行くほどじゃないと思って放っておいたら、同じところを何回もやるようになった」などという話はよく聞きます。これは原因は色々あると思いますが、とにかく「甘く見ない方がいい」ということです。再発率は10~40%ともいわれています。またかばった結果今度は他を痛める、ということも少なくありません。

ただ、原因を同定し、適切なトレーニングを積めば再発のリスクは下がります。HPでは肉離れについて何回かに分けてお話をさせていただきます。

 

1回目 肉離れとは

「スポーツによるものが多く、典型的なふくらはぎの肉離れは、下腿二頭筋の内側頭の筋肉の部分断裂です。大腿部のものは、前面は大腿四頭筋、後面はハムストリングの筋部分断裂です。 筋肉が伸ばされながら収縮すると、筋力に負けて部分断裂を生じることがあります。それが『肉離れ』です」(日本整形外科学会)。諸家様々な見解があると思いますが、日本整形外科学会の見解は上記の通りです。

右大腿二頭筋肉離れ(発症から3日後)

2 どこで肉離れするのか?

肉離れは損傷した組織の部位によってその治るまでの日数が大きく変わります。ですのでどこで肉離れしたかがとても大切です。

大きく分けると①筋肉と筋肉の間の膜が切れる(筋間出血、筋膜炎)、②筋肉が切れる③筋肉と腱の組織が変わる部分が切れる,または腱が少し切れる④腱が切れる、腱が骨からはがれる、に分類されます。

ざっくり、本当にざっくりですが、①は1~2W②は2~4W③は2~11W(程度で大きく変わります)④場合にっては手術、です。

3 切れたところはどうやって治っていくのか

「筋力をデザインする」石井ほか2003

y Tero A H Järvinen 2018.

図をみると何となくイメージが沸くと思いますが、簡単に言うと「かさぶた」ができます。

M:筋、T:腱 組成が違う Charvet et al. Muscles, Ligaments and Tendons Journal 2012

また、肉と腱、腱と骨は組織の組成が違うためくっつきにくいという難点があります。

肉離れの治療は「かさぶたを作って切れたところをつなげるという体の働きを邪魔せずに、どうやって周りとなじませてまた使える組織にしていくか」ということだと思っています。そしてその予後(治る期間はどこで傷がついたか、によって全く違うということです。そのためには適確な病態の理解が大切だと思っています。

次回は実際の治療やトレーニングについて書きたいと思います。